ひつじやで取り扱っているシート綿は7種類(2019.5.8現在)。
いずれも「普通のウール用紡ぎ車」で「手紡ぎ」することができます。
◆ペルー綿:優しい淡いベージュ、しっとりとした感触で、「ひつじや取扱い綿の中では」比較的繊維太めの硬め(取扱い綿の中では、の話です。コットンですので肌に当てたときにウールのようなチクチク感はありません)。夾雑物(葉や種の欠片)は少なく、適度なハリとコシがあってとても紡ぎやすい。綿紡ぎ初心者におススメ! ひつじや的に最愛のコットンです。これが一番好き!
◆オーガニックピマ綿:農薬や化学肥料を使わすに生産された有機栽培綿。繊維が長く、紡ぐとシルクのような「照り」がほんのりと出ます。滑らかなので(滑らかすぎて)、紡いでいると若干するっと「抜ける」「逃げる」感じがあります。弾力性はあまりないので中綿には不向き。細めに紡いで編んだネックウェアは肌に当てると幸せ〜。
◆インドオーガニック:農薬や化学肥料を使わすに生産された有機栽培綿。弾力性は中くらいで、シートの状態だとしっかり空気を抱えて膨らんでいます。細かい葉っぱの破片が全体に散っているので、ちょっと除去は面倒。弾力性があるので中綿にも使えます。
◆メキシコ綿:比較的夾雑物少な目。細く柔らかで、弾力もそこそこ。なんというか、色んな意味で「中間くらい」な印象があります。一番お安いので中綿としてお求めいただくことも多いですが、糸にしてもいい感じです。
◆エジプト綿:ペルーほどではありませんが、ほんのりベージュがかっています。細く柔らかで長い繊維ですが、ピマよりは気持ち短いように感じます。柔らかですが「抜ける」感じは少なめ。夾雑物の混入は多め。繊維の絡みやすさのせいかもしれませんが、葉っぱの欠片などが取りにくい感じもあります。
◆ブラジル茶綿:しっとりと柔らかく、赤みがかった茶色も濃い。大変柔らかく繊維もそれほど短くはないのですが、夾雑物多め。繊維が柔らかすぎて絡みついてしまっており、完全除去はなかなかに難しい。
◆ペルー茶綿:ブラジル茶綿よりも若干色は薄め。グレーがかった茶色。ペルー綿(白)同様、適度なハリとコシがあり、夾雑物は比較的少なめ。
※綿は農産物なので、収穫年によって多少の違いがございます(夾雑物の多さとかね)。上記はあくまで「目安」とお考えください。
【柔らかさ目安】ピマ > エジプト > メキシコ > インドオーガニック&ペルー
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【シート綿の紡ぎ方】
1.まずは広げましょう
ビニール袋から取り出して
縦方向に広げます。密着してはいませんので、ひょいひょいと開いていってください。
次に横方向を広げますが、横方向はぴっとりくっついている可能性があります。
写真を見ていただくと縦に三等分されている(折りスジが2つある)ことがわかります。紙で言うところの「巻き三つ折り」「内三つ折り」「片観音折」という状態です。
端っこをちょいと詰まんだり揺すったりすると端が見つかりやすいです。
これでフルオープン。だいたい畳一枚分くらいです。
ちなみに大きさ比較用に写っている犬は体長約40cm、体重4.5kg。今は亡き愛犬でございます…いい犬だった……!
2.繊維にそって裂く
後々のローラグ作りスライバ―作りを考えて、作業しやすい幅に裂いてしまいましょう。
私はだいたい手のひら幅くらいに、縦方向(繊維の方向)に裂きます。
ここから先はもう「好き好き」「お好みに合うほうで」になります。
3−1.紡ぐための準備(方法その1)
裂いたシート綿の端っこからローラグ(篠:しの)を巻いて作る。
私は「紡ぐために繊維を丸めたもの」を「ローラグ(ローラッグ)」と呼んでいますが、綿用に中の空洞少な目にみっちり巻いたものは「puni(プーニ―)」と呼んだり、まあ色々あるようです。
※毎度のことですけども、「最終的に自分が作りたかったものが効率よく作れる方法が【いい方法】で【正解】」だと私は考えていますので、自分に適した方法が見つかるまでは色々と試してみてください。
紡ぐ!
イベント会場などで「綿を糸にしたいのですけど、紡ぎ車しか持っていなくて」と言われることもあります。
問題ないです、普通のウール用紡ぎ車で紡げます。
力強い相棒、ミニスピナーでぶいぶい行けます。
スピンドルを使うなら10g前後の軽いものにしましょう。
足踏み紡ぎ車の場合は回転比を上げましょう(フライヤー側を一回り小さい輪にかける)。1回踏むごとにフライヤーが回る数が増えるので、綿などのように短くて撚りを多く必要とする繊維を紡ぐ場合に楽になります。吸い込みは極力弱く。巻き取りが上手くいかないようであれば徐々に強く調節していきます。
3−2.紡ぐための準備(方法その2)
先にローラグをご案内しておきながらナンですが、実は、私は基本ローラグは作りません。
シート綿を裂いて、自分の手に収まりやすい長さ&幅に調整してスライバ―もどきを作り、そこから直接紡ぎます。
普通にこの方法で紡いで編んで問題は生じておりません。
出来上がった糸も篠を作った場合と比べてもあまり差を感じないのです。
4.撚り止め
カセ揚げしたら、ぐらぐら煮立てて撚り止めします。
最初は浮いてきますが、徐々に沈みます。私はだいたい沸騰してから弱火で30〜40分くらい煮ています。
綿の繊維の表面には水をはじく成分(油分? 蝋?)が付着しています。でないと雨降ったときに水分吸って種が腐っちゃう。
こいつが煮ることで溶け落ち、お湯がうっすら茶色になります。
「精錬」のために薬品を入れる、という話も聞いたことがありますが、基本私は「撚り止め&吸水性アップすればよい」ので煮るだけです。染める場合はもしかしたらもうひと手間いるのかもしれません。
煮終わったら、うっすら茶色がにじまなくなるまで水ですすぎ洗い。
羊毛と違ってフェルト化しませんから、温度差どんとこい! です。ざぶざぶ洗います。
その後脱水し、おもしをつけてピンと張った状態で乾燥させます。
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「ローラグから紡ぎ」と「スライバ―から紡ぎ」は、ウールで例えるなら「紡毛」「梳毛」の違いになるわけですが、ウールと違い綿は繊維が大変短いです。そのためローラグから紡ぐにしてもロングドローというほど空気を含ませないですし伸ばさない。
正直ローラグからでもスライバ―もどきからでも、糸が出来ていく指先の感触はほぼ変わりません。出来上がる糸もさほど違いがありません。ただこれは私の手の場合なので、もしかしたら他の方だと何か明確に違いが出る、のかもしれません…どうなんでしょ?
シート綿は原綿(種を取っただけの綿)と違い、目の細かいカーダーで十分に解され、また適度に繊維が整列しているのでこの方法でいけるのかもしれません。
これがシートではなく、「コットントップ」になると、逆に繊維が揃い過ぎて、指先に水つけないと紡げないとこまで行っちゃうんですよね…。
主観ですが、繊維の揃い方は 原綿 < ハンドカーダー < シート綿 < コットントップ です。
シート綿はハンドカーダーよりは揃い、トップほどは揃っていないという「ちょうどよい塩梅」なので、使い勝手が良いのかもなあ、と思っています。
つるつる逃げるコットントップを紡いで「ええい、もう二度とコットンはやらん!」と心に決めた方(かつての私)、ぜひシート綿をお試しください。
気持ち良いですよ〜!